2020.10.30
プレスリリース
新型コロナウイルス禍が、生地の備蓄販売、製品OEM、自社製品ブランド販売、小売り事業を展開するサンウェルに大きな打撃を与えている。今上半期(2020年2~7月)は全ての事業が落ち込んだが、ユニフォーム分野の開拓やネット通販向けなど光明も見えた。「得意分野に集中していく」と今泉治朗社長。今後の戦略を聞いた。
~小口・即納ニーズが強まる。~
代表取締役社長 今泉 治朗
――新型コロナによって日本の繊維産業はどのように変化していくと考えますか。
当社に起こった出来事を振り返ってみれば、昨年、コンピューターウイルスに社内コンピューターが感染してしまったことで基幹システムが休止になりました。この復旧がようやく進み、これから業績回復だというところに、新型コロナが発生しました。以降、生地、製品、小売りのいずれも苦戦を余儀なくされています。
GoToキャンペーンもあってここにきて世の中が動き出したと実感していますが、繊維業界の動きは弱いままです。20春夏の店頭・流通在庫が滞留していることがその原因の一つでしょう。この実態からして、川中や川上の繊維企業も今後しばらく厳しい情勢が続くと思います。
ただ、われわれのようなコンバーターと呼ばれる備蓄型の生地商社は、悪い環境下でも生き残ってきました。全体の数量は落ちていますが、小口・即納という機能を磨いてきた結果だと思います。今回の新型コロナ禍でもウィズコロナでもこの機能は顧客に必要とされるはず。そう信じています。
――上半期(2020年2~7月)はどのような推移でしたか。
生地、製品ともに大幅な減収です。言わずもがな、新型コロナ感染拡大の影響です。製品OEM事業が最も打撃を受けました。ネット通販向けは分母こそ小さいながら伸びました。切り売り市場向け生地販売もマスク需要の高まりを受けて伸びましたが、元々あまり大きくない事業なので、ファッション向けの落ち込みをカバーできるものではありません。ユニフォーム分野の開拓が進んだのは数少ない好材料です。数年かけた種まきが新型コロナ禍で実になったという点で、ネット通販とユニフォーム向けは、トライしておいてよかった、と本当に思いました。
輸出は、中国以外は激減です。中国市場の底堅さ感じます。ベトナムでの生地開発、生産は、さあこれからだというタイミングで新型コロナが発生した格好ですが、今後も現地日系商社と連携して素材開発を進めます。
――今後の重点施策を。
基盤強化が最優先です。既存の仕組み、仕掛け、プラットフォームを活用しつつ進化させていくイメージです。それを持って、来るべき次代に備えます。
モノとモノ、人と人、企業と企業などのマッチングも重要な要素になってきます。限られた材料の中で組み合わせによって何を作り上げるか。繊維製品も料理も同じことです。客をよく知り、考える。情報を収集し、さまざまな形でマッチングを推進していきます。
――貴社の強みの一つは生地の備蓄機能です。
売り上げを拡大させるためには幅広い種類の生地をたくさん備蓄しておいたほうがやりやすい。当たり前ですよね。でも、結局いつまでたっても売れないものも出てくる。これでは、在庫処分損が発生し、利益を圧迫します。今は拡大が難しい時代。ビジネスモデルの見直しを図ります。
実は新型コロナが発生する前から取り組んできたことです。得意分野に集中するということです。当社が得意とするのは、やっぱろ綿や合繊のオーソドックスな無地素材です。ここはこれまでと同様、手厚く備蓄していきます。とはいえ、当社が得意としない生地を顧客が求めてくることもあります。その際は別注で対応します。そのためにも産地や染工場など生産現場との関係性は親密にしておかなければなりません。
――デジタル化も今後のポイントになりそうです。
自社生地通販サイト「サンウェルネット」の機能強化を進めているほか、さまざまな形でデジタル技術の活用を予定しています。
(繊維ニュース 2020年10月30日)