Over the next half-century

テキスタイル製造卸トップに聞く7 ~サステイナブルで反転攻勢~

2021.03.25

プレスリリース

財務体制を強化

代表取締役社長 今泉 治朗

――20年度の状況は。

 21年1月期は売上高で前期比20%ほど落ち込みましたが、在庫も約3割削減、費用対効果の悪い素材や得意としない分野を中心に減らしました。生地は定番やウール調・麻調合繊の動きが良く、10%減にとどまりました。ただ、子会社で子供服を手掛けるフィスはロックダウン(都市封鎖)の影響もあり店舗を3分の1閉めるなど、とくに製品、OEM(相手先ブランドによる生産)などのリテールビジネスが打撃を受けました。
 前期の1年間は厳しい環境が予想されましたので、機会損失を恐れず在庫削減に取り組み、財務体質を改善。資金に余裕ができたことで社員の雇用も確保。また、販売先や仕入れ先、金融機関の信用も向上しました。

――今期の方針は。

 今後は得意分野・用途に経営資源を投入し、反転攻勢を図ります。得意とするレディスアパレルに加えメンズやアウトドア、スポーツ、ユニフォーム、資材関係を開拓するほか、品質、価格、機能、海外デリバリー機能を生かし、従来攻めきれていなかったレディスアパレルのローワーゾーンも仕掛けていきたいですね。
 ウール調合繊「ラナテック」や麻調合繊「リフラクス」も安定品質、リーズナブルな価格で採用が進んでおり、こうした素材のブランディングを強化していきます。また、オーガニックコットンやリサイクルポリエステル、リサイクルナイロンなど、サステイナブル(持続可能な)を切り口とした素材を充実させていきます。我々の強みである多品種少量即納システムで、「無駄なく在庫を最小限に生産する」という流通在庫の削減の一助になればと思います。
 SDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みも重要です。障害者の自立支援「パラリンアート」企画や、使い終わった生地見本を回収するごとに1枚当たり10円を「ピースインドプロジェクト」に寄付する活動も行っています。大阪府の青少年ダンス大会への協賛や、フィスでも難病指定の子供たちに寄付する活動を実施するなど社会貢献活動にも引き続き取り組んでいきます。

現地供給も拡大

――海外の状況は。

 日本と中国に加え、タイ、ベトナムでも在庫を持っており、生地売りからOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)にも対応できる強みも生かします。増加するベトナムでの生地生産は引き続き注力します。タイは合繊素材が中心で各拠点の中では一番安定していました。中国は昨年中盤から後半にかけて回復したので、現地売りを伸ばしていきたいですね。ただ、物流コストの上昇は懸念材料。綿花、綿布もタイトで価格が上がっているので、生機の確保も重要になっています。

――デジタル対応は。

 受発注システムのサンウェルネットに磨きをかけるほか、展示会やカタログのデジタル化も進める方針です。生地は触感なども重要ですので、デジタルとアナログを融合させ、顧客とコミュニケーションを密にとっていきます。一昨年に着手したECは、リテール・製品事業で力を入れていく方針です。SNS発の新興アパレルが活性化していることから、SNSを活用したアピールも強めていきたいですね。

(繊研新聞 2021年3月25日)

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