Over the next half-century

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2021.10.29

プレスリリース

国内仕入れ先とは取り組み型で ~同業との「持ち合い」を推進~

社長 今泉 治朗 氏

 サンウェルは前期(2021年1月期)末に大幅な在庫処分を行った。生地を備蓄し、小口から即納するというサービス機能は今後も磨くが、その“幅”と“奥行き”に明確な制限を設けた。得意分野に位置付ける無地素材は手厚く備蓄するが、それ以外は「持ち合い」という販売戦略を敷く。その意味を含め現状と今後を今泉治朗社長に聞いた。

――新型コロナウイルス禍やさまざまな環境変化によってモノ作りのサプライチェーンにも変化が見られます。

 当社は生機の仕入れこそ海外からの輸入が大半を占めていますが、染色加工のほとんどは国産です。国内の産地企業や染工場とは運命共同体の関係です。ただ、顧客への安定供給という使命も一方ではあるわけで、そのために中国やタイ、ベトナムでの生地開発と生産も進めてきました。
 ベトナムでの生地生産は、新型コロナ感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)によって行き詰りました。一気に吹っ飛んだと表現できます。このこともあり、同国での生地の備蓄販売はとりあえずやめます。商売自体は続けますが、手法を変えていく必要があります。
 中国に関して言えば、欧米ブランドが新彊ウイグル問題も関連して脱・中国を進めていますが、新彊綿のシェアやトレーサビリティーを確保できるかという点などにより実態としては不可能に近い。人権侵害やジェノサイドを容認するわけでは決してありませんが、日本は安易に欧米ブランドの後を追うべきではないと考えています。

――国内の仕入れ先については。

 共に生き残っていきたいとは思いますが、小規模なところは(事業継続が)しんどいと思います。少しでも生き残る産地企業や染工場が増えるためにわれわれ生地商社ができることは、繁閑差を意識した計画的な発注を取り組み型で進めていくことでしょう。

――上半期(21年2~7月)を振り返ってください。

 生地販売は前年同期と比べてほぼ横ばい、製品OEMは依然として大苦戦でした。自社製品ブランドや小売り事業は店頭の悪さをネット通販で補完する形で横ばいです。
 下半期に反転を期したいところですが、スタート月だった8月が悪かった。営業日数も少なくいつも売り上げが少ない月ではあるのですが、今年はいっそう悪かった。景気の上向き感は全く感じられません。

――前期に在庫の圧縮、処分を進めました。

 綿や合繊の無地が当社の強みです。これ以外の生地の備蓄品番と数量を減らしました。期末にはかなりの在庫処分も行いました。いったん身軽になったこともあり今期は少し仕込みを増やしてはいます。

――備蓄品番を減らすと機会損失が発生するのでは。

 持ち合いという手法に活路を見いだしています。市場が成長しているわけではない時代に幅広い商品を奥行きも持たせながら備蓄するのはリスクが高すぎる。それなら、強みの品番に集中して、それ以外の注文、需要があった際には同業他社に頼ればいい。それが持ち合いです。幾つかの同業さんとこの考えを共有できており、協業、連携の輪が広がりつつあります。時代に即した手法だと思います。

――輸出の状況は。

 中国市場は元気ですね。会員制交流サイト(SNS)系などを含め現地ブランド向け生地販売が順調に伸びており、今後も伸ばします。欧米向けは現状、横ばいです。「ミラノ・ウニカ」から「プルミエール・ヴィジョン」へシフトしようというタイミングで新型コロナが発生しました。今後の出展計画は未定です。

――通期の見通しは。

 前期並みは維持したいところですが、先行きは不透明です。
 サステイナビリティーには引き続き力を入れていきます。3種のサステイナブル生地ブランドをこのほど投入しましたし、当社は身体障碍者の支援活動や見本帳のリサイクルなどにも古くから取り組んできました。ただ、当社も含め日本のサステイナブルはまだまだ薄っぺらい。もっと厚みのある取り組みが求められていると感じています。


(繊維ニュース 2021年10月29日)

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