Over the next half-century

生地商社 トップインタビュー

2022.11.18

プレスリリース

サンウェル 社長 今泉治朗 氏

サンウェル(大阪市中央区)の業績は一昨年が底だった。コンピューターウイルスと新型コロナウイルスという“ダブルウイルス”に悩まされた。サステイナブルの観点と処分損の低減を目的に備蓄生地を減らし、身軽にはなったが、前期はまだ大きな回復には至らなかった。今上半期は十数%の拡大と回復が鮮明だ。国内外でウイズコロナの需要をつかんでいる。現況と展望を今泉治朗社長に聞く。

【利益創出+利他の精神】~国内外生地販売が回復基調~

――日本の繊維産業が進むべき道とは何でしょうか。
 個々の企業も産業も、まずは利益を上げること。そうでもなければ存続できないわけですから当然ですよね。利益を上げるためには顧客に喜ばれる商品やサービスが必要で、それを追求することが進むべき道と言えるのではないでしょうか。
 時代の流れに乗ることも大切です。今でいえばサステイナブルということになります。やはり本流には乗っておかないといけない。本流に乗りつつ、独自の商品や仕組み、取り組みを加えることができればベストです。その上で業界のナンバーワンやオンリーワンを目指す。20年前に独自のシステムで開設した生地のネット通販サイト「サンウェルネット」はその一つかもしれません。
 生地販売というのは非常に細かな作業を伴います。手間を極力低減し、コストも抑える必要がある。サンウェルネットはこの趣旨で立ち上げましたが、逐次、進化させています。
 3次元(3D)データを駆使したサービスを展開する米国のスウォッチブック(カリフォルニア州)と連携したのも進化の一つです。サンウェルネットとスウォッチブックが展開するサービスとの親和性は高いとみており、リンクさせていきます。在庫ロスの低減にもつながりますので、サステイナブルの要素もあります。

――サステイナブルと言えば、以前からさまざまな角度でその種のアプローチを続けています。
 見本帳の台紙と生地を回収し、紙に再生、それを再び見本帳の台紙などに使うという取り組みをこのほど始めました。他にも、オーガニックコットン使いの生地は古くから取り扱ってきましたし、インドの綿花種子栽培に関わる子供たちへの支援にも取り組んできました。パラリンアートとの協業生地の販売、再生ポリエステル糸使いや生分解性生地の取り扱い拡大なども推進しています。
 お金もうけだけではない、こうした取り組みを進めることは、私が入塾していた故稲森和夫氏の盛和塾の利他の精神であると言え、日本の繊維産業が進むべき道の一つだとも考えています。

――上半期(2022年2月~7月)はいかがでしたか。
 今思えば、前々期が当社業績の底でした。コンピューターウイルスによるシステム障害でネットの受発注がストップしたことと新型コロナ禍が要因でした。その頃に在庫も大幅に削減。結果、前期は身軽に事業を進められた一方、想定していた通り備蓄が減ったことによる機会損失もありました。これは仕方ありません。結果、新型コロナ禍も続いており大きく回復できなかった。
 今上半期は市況も回復した上、綿無地、綿先染め、合繊という3本柱に特化したことも奏功し、売り上げは十数%の伸びとなりました。国内向けも輸出も伸びました。製品OEM事業もどん底から脱し、新規や復活案件も出てきました。ただし全体として新型コロナ禍前まではまだ戻っていません。

――日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)が純国産の認証制度「J∞クオリティー」で、生地に特化した「J∞クオリティー・テキスタイル」を新設しました。
 大いに期待しています。日本で生地の企画や備蓄を行うのは当社などの生地コンバーターです。商品だけでない存在意義がこの業態にはあると考えていますし、新制度を海外市場向け含め拡販に活用したいですね。海外市場開拓の手法としては、既に出展いるイタリアの「ミラノ・ウニカ」、中国の「インターテキスタイル」に加えて、「プルミエール・ヴィジョン・パリ」も検討しています。

(繊維ニュース 2022年11月18日)

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