Over the next half-century

Topインタビュー

2023.10.26

プレスリリース

社長 今泉 治朗 氏

価格引き下げ顧客還元 ~「作り過ぎない」を大切に~

 生地商社のサンウェル(大阪市中央区)はこのほど、一部の生地品番の価格を引き下げた。インフレ下の今に逆行するこの施策を支えたのは、数年前から続けてきた企業努力だ。モノ作りのロスを低減し、時代の変化に応じて備蓄手法もスリムなものに変えた。それを顧客に還元するのが今回の価格引き下げだ。今泉治朗社長に狙いを聞いた。

――貴社の“最旬”な事業や取り組みは何でしょうか。

 あらゆるコストが増大していますが、当社はあえてこのタイミングで一部品番の生地価格を引き下げました。日頃の感謝の気持ちをお客さまに還元する意図です。

――どうやって価格引き下げを実現したのでしょうか。

 生地の品質管理とマーチャンダイジングに注力し、大幅なロス率低減と企画精度の向上、業務改善につなげました。また備蓄サービスに必要不可欠な物流面の整備や、激動する為替に対する施策も進めるなど独自の企業努力も進めました。

 生地の品質管理では、以前の当社は特に海外製の生地を使用した際に返品や修整依頼が頻発していました。まずはこの改善に取り組みました。具体的には、修整代を半分にという号令を掛け、専任担当者も置いて取り組んだところ、2年で修整代が半分になり、返品も大きく減りました。以前とはガラリと変わったと自負しています。

 マーチャンダイジングでは売れ筋を精緻に予測するなど主に企画精度の向上に努めました。この二つの施策でロスが大幅に削減できました。物流改革や為替への施策でも効率化を図ることができ、それを価格引き下げという形で顧客に還元しようと考えました。

 当社は備蓄型の生地商社ですが、なんでもかんでも備蓄するという時代はもう終わりました。数年前には綿無地、綿先染め、合繊無地という当社が強みを発揮できる3本柱に備蓄を集中し、プリントなど他の品番は同業他社との連携、持ち合いに切り替えるという施策を取りました。総花的なモノ作りから脱却したということです。

 これによって在庫が圧縮できたことも、今回の還元を実現できた要因の一つです。全ての品番を引き下げられたわけではありませんが、顧客や社会のお役に立つという方針の下、可能な限り顧客への還元を優先していきたいと考えています。

――新型コロナウイルス禍で休止していた東京、大阪での総合展を復活しました。

 東京、大阪とも来場者という点ではコロナ禍前のにぎわいではありませんでしたが、「(打ち出しが)分かりやすい」という評価をいただくなど好評だったと思います。来場者減の要因が、案内状の配布数を絞ったからなのか、そういう時代なのかの検証は必要です。その検証を踏まえた上で、今後の最適な打ち出しの形を考えていきます。

――上半期(2023年2~7月)は。

 売り上げは前年同期比横ばいでした。コロナ禍と在庫圧縮で30%減少し、前期で16%戻した形です。備蓄も減らしましたしコロナ禍前に戻せばいいというものではない。何より、SDGs(持続的な開発目標)の流れが強まる中でアパレル各社も「作り過ぎない」ことを重視するようになりました。売り上げ拡大だけを追う時代ではないと言えます。

 この業界は、作り過ぎては在庫調整というサイクルを繰り返してきました。その過程で衣料品の大量廃棄という問題も起こりました。生地にしても製品にしても、作り過ぎる会社が出てこないことを願うばかりです。

――通期の見通しは。

 前期比増収増益を狙いたいところですが、不確定要素が多いため読みづらい。これから本格化していく24春夏向け生地受注がどうなるかが勝負です。売り上げ拡大よりも利益が重要という考え方は変わりません。

――海外事業は。

 上半期は全体として足踏みという感じでしたが、中国法人による独自企画が増えていますし、リーズナブルな生地をすぐに出荷できるタイ法人の備蓄機能も評価を得ています。以前トライして今は撤退状態のベトナム向けは、仕切り直しに向けて準備を進めるところです。

(繊維ニュース2023年10月26日)

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