Over the next half-century

Topインタビュー

2024.10.24

プレスリリース

社長 今泉 治朗 氏

 備蓄型生地商社、サンウェル(大阪市中央区)の今泉治朗社長は「独自性の追求」を最優先のテーマに掲げる。この問題意識は業界全体にも及ぶもので、「ものまねや模倣ばかりでは絶対に発展しない」と安易なモノ作りに警鐘を鳴らす。この思いを具現化した展示会などでの打ち出しは国内外の顧客から好評を得ている。「変わること」に対する考えを聞いた。


独自の強み追求すべし~対面重視で商機つかむ~

――この数年で業界、あるいは会社が変化したこととは何でしょうか。

 新型コロナウイルス禍の下では、電子商取引(EC)やウェブを活用したワークスタイルが定着しました。その一方、コロナ禍が明けて人の動きが戻ると、やはり対面を求める流れが強まりました。生地を取り扱うこの業界は特にその流れが顕著です。正確な色や風合いはリアルでしか確認できませんからね。個展や総合展などに活気が戻ってきたのもその証左でしょう。メールマガジンやSNSなどあらゆるデジタルツールが活発になっている一方、生地など商品を直接見て触って、人と会って話し込む。この重要性はコロナ前から今も変わりません。当社もマンパワーの発揮に改めて注力していきます。

――具体的にはどのような形で。

 人材の育成です。商談や出張、展示会などどんどん現場を経験させ、海外市場を開拓していきます。

――業界構造や商習慣が大きく変化しているように思いますが。

 市場が拡大している時には競合各社がしのぎをけずってシェアを奪い合うものですが、今はそうではありません。自社の強みを発揮して、それぞれですみ分けていくことが求められているのだと思います。当社もその観点で、合繊無地や綿無地など自社の強みを発揮できる商材と、ウールやプリントなどそうではない商材とで展開商品の選択と集中を進めました。競合他社とのむやみな価格競争を避けるための措置です。価格競争に明け暮れていたら業界は疲弊していくだけですからね。すみ分けを進めるためには独自性を磨く必要があります。競合他社と商品がかぶっていたり、ものまねのような商品開発を続けていては業界の発展はありません。顧客から最新の情報を得て、それをモノ作りに生かし、独自の付加価値商品を作っていく。それが今求められるビジネスモデルではないでしょうか。業界全体に変化が求められているのだと思います。

――消費の二極化やSDGs(持続可能な開発目標)の浸透も顕著です。

 主体的に独自の商品を開発しつつ、二極化への対応を進めます。方向性は付加価値化。日本で生地を作り、売っていくにはそれしかありません。備蓄による小口・短納期機能に磨きをかけながら、国内外に売っていきます。SDGsの浸透で作り過ぎは悪になりました。以前のようなセールありきの余剰生産が異常であっただけで、今が実需であると考えます。流通構造、作り方、売り方、考え方、価値観を変えていく必要があるということでしょう。

――今期(2025年1月期)ここまでの商況は。

 コスト高を受けて価格改定を進めていますが、数量が減っていることが響いて前年同期比微減収微減益の推移です。

――力を入れる輸出は。

「プルミエール・ヴィジョン・パリ」出展の成果として欧州向けや韓国向けは伸びていますが、全体としては伸ばせていません。

――海外市場以外に今後の拡大対象はありますか。

 メンズ向けは拡大の余地があるとみていますし、ユニフォーム向けも引き続き伸ばしていきます。

――昨年から個展(総合展)も復活させました。

 総合展はコロナ禍で自粛していましたが、昨年9月に対面重視の観点で復活させました。今年9月にも開いたのですが、来場者も増え、打ち出しに対しても高い評価を頂くことができました。この秋から冬にかけても商談会や内見会を開きつつ、「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」や海外展へも出展します。国内外で対面営業に力を入れ、商機をつかんでいきます。

(繊維ニュース2024年10月24日)

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