Over the next half-century

Topインタビュー

2025.10.29

プレスリリース

社長 今泉 治朗 氏

 サンウェル(大阪市中央区)の上半期(2025年2~7月)は、生地、製品ともに苦戦を強いられた。アパレルがモノ作りの総量を減らす傾向を強めていることが背景にある。ただ、備蓄による小口・即納機能と顧客に響く商品企画機能を磨きつつ、「動く」を実践すれば商機は必ず見つかると今泉治朗社長は強調する。現況と方針を聞いた。

動くことが商売の基本

全方位への商品開発にも力

――独自性を発揮するために磨いてきたことは何でしょうか。

 多品種の生地を備蓄することによって、小口から即納できる販売機能が当社の独自性す。加えて改めて強化を図っているのが、動くことです。やはり対面販売を重視しながら企画・営業スタッフが動けば、何らかの商機が生まれてきます。インターネットによっていろんなことが便利になりましたが、商売の基本は動くこと。顧客の元に足を運ぶことが何よりも大事。これを改めて大前提にしていきたいと考えています。泥にまみれながら動き続ける。この当たり前のことを当たり前にやるのみです。

――今期からテキスタイル販売開発部という新たな部署も設けました。

 改めて積極的に動き、顧客数を増やし、顧客それぞれとの距離感を縮めることが目的ですが、うまく機能していると思います。「外に出て動きたい」と内勤だった女性が志願してこの部署に移りましたが、活躍してくれています。埋もれた人材の登用という人事戦略の成果とも言えます。

――企画開発力も貴社の強みだと思います。

 リーズナブルだけど見栄えのする生地、他にはない付加価値のある生地、さまざまな角度で企画開発を続けています。低価格ゾーンから中高級品ゾーンまで、いずれのゾーンも当社にとっては大切な顧客。これからも全方位で開発を続けていきます。

――このほどGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)認証を取得しました。

 よりサステイナブルな会社へという方向性の一環として取得しました。海外向け生地販売の拡大を至上命題にしていますが、海外市場を狙うにはサステイナビリティーやトレーサビリティーの認証が必須になっていますからね。

――海外の展示会にも数多く出展しています。

 今年は特に増えており、ほぼ毎月のペースで海外展に参加しています。すぐに成果が出るものではありませんが、将来への種まきという意味も込めて力を入れています。日本本社と中国、タイの法人で生地を独自に備蓄しているのも、海外向け拡大への方策です。

――生地のブランディングにも積極的です。

 再生ナイロン糸使いの「リコンフィー」、オーガニックコットン100%を集めた「コードットオーガニック」、再生ポリエステル糸使いでストレッチ性にこだわった「レナペス」、ウール調合繊の「ラナテック」、麻調合繊の「リフラクス」、綿調合繊の「マルーデ」などが順調に売り上げを伸ばしています。当社は元々綿織物が主体でしたが、これらの生地ブランドは合繊が主体です。
 逆に言えば綿関係が減っているわけで、再構築を図りたい。越州、遠州、尾州、紀州、播州の各産地との取り組みから生まれた日本製生地「ジャパンレガシィ」はその一環です。

――上半期(25年2~7月)を振り返ってください。

 前年同期比で減収でした。国内向け、海外向けともに苦戦しました。海外では韓国向けは比較的堅調でした。製品事業は生地に輪をかけて厳しい情勢です。
 アパレルがモノ作りに慎重になっています。特に商社を通す大口案件を減らしているようです。小口は当社など備蓄型生地商社に注文する。そういう意味では悲観ばかりではありません。
 新型コロナウイルス禍後の″バブル″が終わり、アパレル製品の売り切りご免が常態化した今が実は正しいあり方なのかもしれません。今までが作り過ぎだったことは事実ですしね。「ちょっと足りない」という状況は「ほしい」という消費者心理につながります。そこをくすぐるような打ち出しをしていきます。

(繊維ニュース2025年10月29日)

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